お誕生日会

今日はポールの誕生日。
ここ数年、ろくなお祝いをしてあげられなかったので、今年こそは何かしたかった。何か印象的なことを。で、ふと思いついた。


作戦は2週間ほど前から始まった。
まずはBBQ上手なジョンソンにお願い。いつも好評なスパイシーチキンとサテを作ってもらおう。
そしてケーキはペニーにお願い。彼女は甘いものは一切口にしないくせにお菓子を上手に作る。
手軽につまめるフィンガーフードも欲しいな。マーラに春巻きをお願い。
他の友達にも聞いて回る。「17日あいてる?」
そして最後に必ず念を押す。「これ、絶対ポールには黙っててね!」

新居のお披露目も含めて、この日に、この家で、サプライズパーティをするのだー!

予定どおり当日の午後1時。マシューからポールに電話があった。ポールを連れ出してもらうのだ。よし、これで家の中で準備を始められる。2時にはジョンソンが来てBBQのセッティングをして、ビールも届いて、3時には友達が全員集合する予定だ。そしたらマシューにポールを連れて帰ってきてもらおう。ポールが門を開けたらみんな揃って「ハッピーバースデー!」と言って驚かせる。完璧な予定だった。(←過去形)


ところが、ポールがなかなか出て行かない。それどころか庭に水撒きなどはじめおった。これはまずい!あと15分で2時!ジョンソンとポールの鉢合わせが一番マズイ!!ジョンソンに慌ててメール。すると「こっちも実はまだ春巻き揚げてるとこなんだ。1時間以内で行くから。」と返信が。ん〜、みんなのんびりしてるなー!イライライライラ。


ポールはなんとか2時前に出て行った。急いで外に出せるテーブルやイスを運び出し、簡単に掃除する。しまった!お金下ろすの忘れてた!準備の手伝いに来てくれたジェニーに頼んで最寄のコンビニまで連れて行ってもらう。こういうときバイクに乗れないとほんっとに不便!急いで帰ってくると家の前に車が!ひゃ〜!
3時前にジョンソンを含め、友達が続々と、ほんとに数分の間にみんなが到着。車が4台、バイクも数台。どうやって停めたらいいの〜?「これどこに置いたらいい?」「○○持ってる?」「△△はどうする?」知らない人同士がいるから、ここはホストとして紹介とかしなきゃいけないのに、みんなにハローと言うので精一杯。お飲み物でも…って、ビールはどうした?!しかも氷がない。ビールが届いても冷やせない。ポールが1時に出て行ったら買いに行くつもりだったのに、予定が狂ってすっかり忘れていた。

いつもマイペースなテリーが声をかけてきた。こんなときに何っ?「Tomo、パニくってる?」そう言われてハッとした。『そ、そんな風に見える?』と平静を装うも遅し。「うん。落ち着いて、落ち着いて。慌てても何も片付かないよ。」おっしゃるとおりです。


ビールも届いて、ついでに氷やソフトドリンクも追加オーダーして、なんとかなってきたな。ふぅ〜。
「ちょっとー!あんたの旦那、いつ登場するの?」ドキッとして時計を見る。3時半過ぎてるじゃんかー!マシューに電話すると今ビーチで飲んでるんだとか。あと10分で出るから、と言う。待たせているみんなに「あと10分」と言ってから20分経過。マシューに催促の電話。でもマシューに文句ばかり言ってもいられない。ポールが1度飲み出したら、席を立たせるのに一苦労なのは私がよく知っている。ようやく待ちに待った知らせがあり、みんなで門の前に集合。

家の前に車やバイクがズラズラ並んでいるのを見て何か言っている声が近づいてくる。そしてガチャガチャと門を開けたー!
1、2、3、サプラーーイズ!
このとき「ハッピーバースデー!」と言っていたのは私一人だった。でもポールは確実に驚いている。やったー、大成功!


裸足でくつろげるように植え変えた芝生、庭に面したパティオにテーブルやイスを出して過ごすのがポールの目標だった。テーブルやイスは借り物だけど、ガーデニング大作戦やっといてよかった〜。


BBQ大将ジョンソンのスパイシーチキンも好評で、ペニーのケーキのおいしさにはみんなが驚き、
ポールお得意の「アブラハムと7人の子」をみんなでやって、宴は楽しく過ぎていった。


最後には、いつか起こるだろうと覚悟していたことが。みんな着替えも水着もないくせにプールに飛びこみはじめた。小さなプールはまるで公衆浴場。でもケンカもなく、器物破損もなく、みんなには「すっごくいいパーティだった、ありがとう」と言ってもらえて、私の気苦労は報われた。何よりポールが喜んでくれてほんとーーーによかった。でもポールは最後まで私が首謀者だと信じず、誰が黒幕か聞いて回っていた。

あたしだって、やればできるんだぃ。
でも、こんな大規模な内緒のパーティなんて、もう2度としないっ!