七草粥の朝に

うぅ〜っとうめき声で目が覚めた。ポールがBad Bellyだという。
私は「おなか」といっても胃と腸を分けて考えるんだけど、ポールは(いや、英国人は、ヨーロピアンは、もしくは外人は?)「Stomach」や「Belly」でひとくくりにする。
おなかの薬と言われても、胃薬と腸の薬じゃ働きがぜんぜん違うのに。胃が痛い時に下痢止めは飲まないっしょ。
刺すように痛いというので「胃薬」を渡してみた。いつもはこれで痛みが治まる。
でもこの日はそうはいかなかった。



あまりに痛がるので、ポールの運転するバイクで近くのクリニックに。
受付で「ドクターはいますかっ?」と聞くとお姉さんが「私だけど。」
えぇー!あんたで大丈夫?!
でも背に腹は代えられぬ。状況を説明して注射と薬を処方してもらった。



しかーし!痛みは治まるどころか悪化し、翌朝には大きな病院に行きたいと言い始めた。
うん、それがいい。ちゃんと診てもらおう。
うちの家政婦さんおすすめのスリヤ・ウサダにタクシーで行くことに。

なぜかいきなり個室に通された。大型フラットTVなんかもあって、ちょっとしたホテル?
消化器系のスペシャリストに会いたかったんだけど、あいにく急患が入ってすぐに来れないとのこと。その間に血圧を測りますね〜と看護婦がやってきた。
どこから来たの?バリは観光で?どこに泊まってるの?
って、よく聞かれる質問。ここは路上かーっ?!
しかも血圧測るのにしゃべってたもんだから、案の定高かったらしい。
「また後で測りなおすからTVでも見てリラックスしてて」と言って看護婦は出て行った。
しゃべらすなーーーーっ!



しばらくすると待望のスペシャリストがやってきた。
おなかを一通り触診。「ガスですね〜」みたいなことを言って終わり。
うちの胃カメラのシステムはすばらしいから、見てったらどうですか?みたいなことも言って出て行った。
なんだよ、おまえー。それだけ〜?
でも、胃カメラで見るのはいいと思った。
本人にも自分の胃の荒れ具合をしっかり見てほしい。
でも値段を聞いてビックリ!胃が縮むようなお値段。
麻酔をするとさらにドーン!ぁぁぁ、胃が…



=====以下、グロいのがダメな人は読まないでください=====



さんざん悩んだ末、麻酔なしで実行することに決めた。(もちろん本人がね!)
直径1cmあるかないかの黒いチューブ。横たわるポール。
私は壁にかかった大きなTVのスクリーンで生中継を見れる。
チューブがどんどん進んでいく。ポールはウェー!ウェー!と叫んでいる。
おぉ〜これが胃かぁ!
先生がチューブを止めてパシャリ。撮影だ。
内側に入ると…あぁぁぁぁ!素人の私でも炎症がわかるようなただれっぷり。
これは痛い!パシャリ。
チューブは胃を通過して腸へ。ウェー!ウェー!パシャリ。
折り返してまたパシャリ。
「もう終わるからねぇ」と言いながら、先生は何枚もパシャリとやっていた。ひどい…。



長いチューブがズルズルと出てきた。よく麻酔なしでがんばったね!
助手がさっき撮影した画像をプリントアウトして持ったきた。早い!
「ここが胃の入り口です。ヘルニアですね。」
ヘルニア?ヘルニアといえば椎間板ってイメージだったんだけど、胃もヘルニアがあるの???
(後で調べると「正常の位置よりずれて飛び出ている」ことをヘルニアというらしい)
胃の下部には潰瘍もあった。
でも幸い、薬で治療可能なレベルらしい。手術は最後の手段だという。
事実が明らかになって、ショックなような、ホッとしたような。



チューブのウェーウェー地獄から立ち直りきれていないポールに医者から酷な宣告。
「コーヒー、紅茶、チョコレート、辛いものは今日から一切ダメね。」
えぇーーーー!ポールは紅茶の国の人なのにーーー!
動揺しながら「ア、アルコールは…」と確認するポール。
オフコース!(もちろん!ダメ)」

もう何を楽しみに生きていけばいいのかわからないポール。
かわいそうに…紅茶のパックを100パック買ったばかりなのに!
おいしいチョコを買ったばかりなのに!
全部わたしのもの♪



さっきの個室に失意のポールが戻ると、そこにはおみやげのように薬が並んでいた。
ボトルが5本、箱も2つ。こんなにあって1週間分だという。
飲み方もややこしい!食前だったり、食後だったり。
1日1回だったり、2回だったり、3回だったり。

あまりにややこしいので、表を作ってみました。これでも忘れる。

まずは最低1週間、次にドクターに診てもらうまでは
NO コーヒー、NO 紅茶、NO チョコ、NO アルコール、NO 辛いものを死守せねば!
でもトラウマとなった胃カメラの話をすれば、ちゃんと守れるかな。