娘がやってきた!!

もちろん私のではなく、ポールの。いまドバイで働いてるクレア(27)が5日間の休みがとれたので、お父さんに会いに来たのだ。休みは5日からって聞いてたけど、ドバイからの飛行機がキャンセル待ちで、当日になってもいつバンコクに着くのかわからなかった。何時に来ようが、私の緊張は変わらない。すごくいい子だと聞いてたけど、やっぱりポールの家族に会うとなると、無意識にでも緊張している。



夕方18時過ぎ、彼女からメールがやってきた!きっとフライトの時間がはっきりしたんだ!!見ると「12.20にサムイ島につく」と書いてある。え?明日のこと?ドバイを夜発で、バンコクに朝着なら明日の昼にサムイ島着も考えられるなぁ。でも12:20着なんてない。
ポールは「今夜だ、夜中の12:20だ。」と言い張る。早く会いたいのはわかるけどさ〜、最終便が22:00着だから、夜中の12:20はありえないよ。一生懸命説得するもポールは頑なに「いや、これは今夜だ。きっと飛行機が遅れて、最終便が12:20着なんだ。」と言う。だーかーらー、そんなのありえないって!!あわやケンカに発展しそうだった。

何事も証明しないと納得しないポールなので、私は空港の電話番号を調べてポールに電話させた。自分の耳で「夜中の12:20なんかに着く飛行機はありません」って聞いたほうがいいと思ったから。案の定、そんな飛行機はなかった。

そしてモヤモヤの矛先は、メールをくれた娘に向けられた。「なんでクレアはこれだけしか書いて来ないんだ!便名もないし、航空会社もない!!」確かに情報不十分かも。しかも彼女はスッチーなので、もっと詳しい情報をくれてもよさそうなのに…。



まるで謎解きのように、うちらは各航空会社のフライトスケジュールを見つめ、彼女のメールを再度読み、これが何を意味するのか考え続けた。
20時半頃、ポールがひらめいた!!
「21:20だよ!20分に着く飛行機はこれしかない!きっと数字を打ち間違えたんだよ!!」ポールは答えを見つけたかのような満足げな顔をしていた。数字を打ち間違えただ〜?いくらなんでも、そんなアホなことって!!


でも、もし本当に21:20着だったら時間がない!クレアのメールに「このメールを(うちらが)読むかわからないから、もし空港にいなかったら、自分でホテルに向かいます」と書いてあった。だから、入れ違わないためにも、なんとしてもクレア到着前に空港に行かねばならぬのだーーー!
一応、彼女の部屋をおさえて、空港への迎えの車をお願いした。小さな車で4人でも狭いくらいなのに、なぜか受付の女の子が車に乗り込んできた。運転手、ポール、私、受付。えっと、クレアはどこに座るのかな?まぁタイ語と英語ができる人がいるほうがいいだろう。ともかく4人で雨の中空港へ向かった。

屋根のある建物の前で降ろしてくれればいいのに、なぜか駐車しやすさ優先で遠くに車を停めやがった。雨ですけど!迎える人は大きな荷物を持ってるはずですけど!!ちょっとイライラしながら平屋の建物に入った。その建物、よく見ても見覚えがない。確か左手にATMとか地図のある建物が…ない。もしかしてここはDeparture(出発)では?受付娘に聞いてみると、さっそくタイ語で空港の人に聞いてくれた。答えは聞かずとも、彼らのジェスチャーで察しがついた。「到着口はずっとむこうだよ」と言ってるっぽい。すでに21:15。人を迎えにいくのに、出発口につれてくるヤツがいるかーーーっ!


幸い飛行機が少し遅れて、なんとか到着前に着くことができた。さぁ、一人で来てる若い女の子を探せ!到着口から出てくる人をじろじろ見る。
「あ、あの子はクレアっぽい。…ちがった。ベイビーを連れてる。」
「あの子かも!…でもトロリーに積むほどの荷物のはずがない。」
クレアかも、と思ってみてるから、みんなクレアに見えるらしい。私はまだ会ったこともないから判断できないし。するとポールが急に大きく手を振りだした。「たぶんクレアだと思う。こっちに向って手を振ってるから。」

やってきたのはポールとはちっとも似ていない女の子。Nice to meet you!クレアは「顔は見えなかったけど、カラダのかたちでそうかと思って手を振ってみた」と言って笑っている。人違いじゃなくてよかった〜。後で、あんたのメールが謎で大変だったんだ、と話したらビックリしてた。本気で数字の打ち間違いだったらしい。私だけだったら絶対に今夜とは思わなかった。親子だから直観で何を言ってるのかわかったのかな。

さすがポールの血を引いてて、おしゃべりな彼女。部屋にスーツケースを置くと、すぐうちらの部屋にやってきて部屋飲み。積もる話がたくさんあって、お開きにした時には外が明るかったよー。ポールが聞き役になってるなんて珍しい風景だった。