飼い犬に顔を噛まれる(その2)

肩の後ろで結ぶかっぽうぎ(?)みたいな病院の寝巻きに着替えさせられ、結局お迎えが来たのは夜10時。あー、手術なんて初めて!ローカルの麻酔でハサミの音とか聞こえたらイヤだなー。全身麻酔で眠ってる間にすべて終わっていればいいのに…!


また大げさな車椅子かな?と思って上半身を起こすと「いいの、いいの。ベッドごと移動するから。」はぁ?ベッドごとって何?…と思ってる間に、ベッドがガクンとして、そのままガラガラと押されて病室を出た。なんじゃこれー?!エレベーターの前で止まった。ベッドごと入るの?それは貨物用みたいな大きなエレベーターだった。でも明るくてキレイで、自動でシュッシュッてする芳香剤までついてて、いい香り。


いい香りにうっとりするのもつかの間、とうとうベッドは観音開きの扉をくぐってしまった。バイバイ、ポールさん!「Be brave!」
ベッドで寝たまま手術室まで来たっていうのに、歩いて他のベッドに移動。そこでも少し待って、いよいよほんとの手術室へ(歩いて移動)。


3〜4人のグリーンの…なんていうんだ、白衣じゃなくて、緑衣を着たお医者さんたちが待っていた。「どこから来たの?」「もうどれくらいバリにいるの?」ここは路上か!?
手術台にあがると、大きなライトが目の前に。ひゃー、テレビみたい!目を覆っていたガーゼをはずして、お医者さんたちの顔が一気にのぞきこみ、あれやこれや言っている。アンジンって言ってるよー。これは犬って意味。うわー、緊張してきた。ひざがガクガクしてしまった。あわわ。


すると医者の一人が「日本人?」って確認したのち、「あ〜なた〜から〜、このぉ〜ななななな〜♪」と日本語の歌を歌いだした。歌詞はよく覚えてないらしいけど、メロディを知ってるほかの医者も参加して「ななななな〜♪」。なんの歌だかわかんなかったけど、ちょっとは緊張が緩んだよ。ありがとう。


そうだ、コンタクトレンズが入ってることを伝えなくちゃ…と思ってたら、どうやら麻酔が効いて眠ってしまったらしい。気づいたときはのどがカラカラで咳き込んで起きた。その音で気づいたお医者さんの一人が「もう終わったよ。めまいはする?」と声をかけてきた。めまいはしないし、左目がズキズキすることもない。まだ麻酔だか痛み止めが効いてるのかな。
帰りは“ベッドごと移動”が非常にありがたかった。もうこのまま眠りたい。


明日の朝、専門家の先生が術後の経過を見て、家に帰れるか、もう1泊するか決まるらしい。ポールは念のために着替えやら歯ブラシを持ってくるっていうけど、あたしは家に帰りたいよー。


(その3)につづく