きちがいマーティン

まだ「カオリがやってきた!」の頃、ポールと同じウェールズ出身で、タイを中心に旅を続けているマーティンが、バリに上陸した。いつもだったら、すぐ会うことになりそうだけど、ポールは私とカオリにこう言った。
「マーティンには会わないほうがいい。ヤツはきちがいだ!ほんとに頭にくる!」
なのに、彼のためにゲストハウスを探し、部屋の予約までし、タクシー運転手を手配して空港まで迎えに行かせるポール。世話を焼かずにはいられないのだ。
しばらくは、ポール単独でマーティンと飲みに行ったりして、私はまったく接触がなかった。



我が家にスロベニア人カップルが滞在してる最中も、マーティンからしょっちゅう電話やメールがきた。
バイクを借りるとしたら1日Rp30,000って高い?」とか
「ごはん食べた?今夜のご予定は?」とか
「もう絶対にアルコールは飲まない!で、今日はどこか行くの?」とか
「(ポールの持ってる)ロンリープラネット貸してくれないかなぁ」とか
そんなメールが来るたびに、ポールは「まったく…!」と怒りながらも世話を焼く。
もう41歳なのに、マーティン。



しかし、ついにマーティンがやってきたのだ!しかも我が家に!!!
実際に会ってみると…
けっこう普通じゃん。
でも言われたことをすぐ忘れたり、マイペースなとこがあって
それがポールをイラつかせているらしい。


もう1つ、ポールが最大にムカついていることは、
ウェールズ人なのに、ラグビーに関心がないこと。
別にいいじゃんかー、って思うんだけど、マーティンの無関心さもヒドい…。


先週土曜日の21日は、ウェールズにとって非常に大事な試合のある日だった。
ヨーロッパの6カ国対抗で、2連覇をかけてアイルランドと最後の試合をするのだ。
アイルランドに13点以上で勝てば、ウェールズの2連覇&トリプルクラウン
負ければ一気に4位後退。是が非でも勝たねばー!!


当日に、マーティンが珍しく興味を示した。
マーティン(以下、マ)「ウェールズの試合、何時から?」
ポール(以下、ポ)「(午前の)1時半だよ。」
マ「そっか。…寝ちゃうかもな。」


しばらくして
マ「ウェールズの試合、何時から?」
ポ「1時半だよ。さっきも言ったよね?」
マ「そっか。…で、どことの試合?」
ポ「アイルランドだよ!今のとこ全勝してるのは…(ポールの詳細な解説)…」
マ「そっか。」


また数時間後
マ「ウェールズの試合、何時から?」
ポ「(呆れて絶句)」
さかさず私が「1時半だよ。」
ポ「TOM!聞いた?!今日この会話、いったい何回してると思う?!」
マ「ちがうよー。俺はただサッカーのほうが好きなんだよ。」



そんな興味のないマーティンも、1時半にはちゃんとうちらと一緒にパブにいて一緒に観戦…するはずが、
お店を開けててくれたオーナーをつかまえて、どうでもいい話ばかり大声でしはじめた。
オーナーのジェフもラグビーファンだから、この一戦はみたいのに。
マーティンの席は扇風機の近くで涼しい席。
でもそっちに座るとマーティンの話を聞かされる。
ジェフは蒸し暑くてもゲームを見れるほうへ席を移した。


ひとりでめげずにしゃべってたマーティンだったけど、ついにおとなしくなった。
と思ったら、肘をついたままの姿勢で寝てる!
こんな白熱したいいゲームなのに、寝てる!!!
ポ「ほんとにこの人がウェールズ人だなんて信じられない」


試合は…2点差で負けてしまった。
めちゃくちゃ落ちてるポールと、寝ぼけてるマーティンを連れて家に帰った。
翌朝、つーか昼過ぎに起きた私たち。マーティンの開口一番
ウェールズ、負けたの?」

まーったく悪気なくポールのツボを刺すマーティン。
でも、だから2人はいいコンビなんじゃないかな?
なんだかんだ言っても、ポールはマーティンの世話を焼き続けている。
今もマーティンに彼女を作らせようと、女の子を紹介してるとこ。
デートはうまくいくのかな?